狂気は妖怪のみならず、人や物にも存在する。 きっかけは多種多様、些細な事件で発現することだってそう珍しいことではない。 しかし、その狂気を己の意志で自在に操ることができる存在がいる。 彼女の名は、鈴仙・優曇華院・イナバ。 永遠亭の警備兼医者の助手兼下働きをしている、元・月の兎である。   「弾幕ごっこがしたいの?
私は今忙しいんだけど……まあ、いいわ。
 ちょうど、簡単な
ストレス発散法を求めていたところだったの」
短いスカートを翻ひるがえし、手に構えるは数枚のスペルカード。 相手の準備が整ったのを確認すれば、合図は不要。 弾幕ごっこはあまりにも唐突に、突拍子もなく開始される。   「申し訳ないけど、
最初から全力でいかせてもらうわね。
 あまり帰りが遅くなると、
師匠にどやされてしまうから」
左目に手を添え、力を籠める。空気は痺れ、空間は震え、そして鈴仙は音もなく飛び上がる。   「覚悟は良い? 私の眼からは、
何者も逃れることはできない!」  
ピストルのように指を構えたまさにそのとき、鈴仙の左眼は深紅の輝きを放った。