黄昏時は逢魔刻おうまがとき。 外の世界ならいざ知らず、この幻想郷では夕刻に外出するべきではない。 その名の通り、魔に遭遇してしまうから。   「おやおや、随分と美味しそうな子どもがひとり。
こんなところで迷子かな?」   「血色も良くて肉も柔らかそう。  咲夜が料理してくれれば、  どれだけ美味しくなるのかな」
緋色の空を背後に従え姿を現すは、互いに金色の髪を持つ魔が二体。 宝石のような翼を持つ狂気の吸血鬼、フランドール・スカーレット。 昼でも夜でも関係なく闇を操る妖怪、ルーミア。 幼い少女のような外見を持つ二体の魔は迷い人を囲いながら、口角を上げる。   「こんなところにいちゃあ危ないよ。
悪い悪い妖怪に食べられちゃう」   「お姉さんたちが安全なところまで  案内してあげる。  あなたが妖怪に食べられないように、ね」
「さあ、手をつなごうか。
もう二度と、迷子にならないように」   「怖がらなくていいよ。  あなたを悪いようにはしないから」  
誰そ彼時は逢う魔が時、大禍時おうまがとき。 この時間は魔が溢れる。だからこそ、誰にも頼れないからと、安易に助けを求めてはならない。 夕闇の中で出会った彼女たちの手を取ったが最期、待っているのは痛みと闇だけ。