「おやぁ? おかしいなあ。
これは迷っちゃったかなあ」
少女たちに手を掴まれ、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。
安全な場所はどこなのか、見覚えのある場所で行ったり来たりを繰り返す。
本当に彼女たちは味方なのか。もしかしたら、わざとやっているのでは……。
「そういえば、
お母さんから言われなかったのかな?」
手をつないだまま、宝石の翼を持つ少女は、笑顔を浮かべて問いただす。
「こんな時間に外を出歩いちゃあいけないよ。
人間を食べる妖怪が、吸血鬼が、
魑魅魍魎が出るんだから……って」
彼女たちの足がぴたりと止まる。
「そうそう。
人喰いはいつもお腹をぺこぺこ空かせてる。
くうくうお腹を鳴らしてる。
美味しそうな人間はいないか、
どうやったら巫女にバレずに捕まえられるか。
いつも、ずっと、どんな時でも
……妖怪たちは考えている」
緋色の瞳が獲物を捉える。気付いたところでもう遅い。君はもう、逃げられない。
「つかぬことを聞くけれど、
あなたは食べていい人類?」
「それとも、私たちに食べてほしい人類?」
返事をする暇はなかった。口を開く余裕もなかった。
少女たちの手が近づいてくるほんの数秒が、最後に目にした光景だった。