死にたくない、と願ったのはいつからだっただろうか。
仏に身を捧げ、人のために生きるようになった後か、はたまたもっと前か。
とにかく、聖白蓮は死というものを恐れるようになってしまった。
「死にたいと願う人間なんて、
基本的にはいないはずですから」
しかし、今のままでは死から逃れることはできない。
人間という生き物は刹那的に生き、そしてむざむざと終わりを迎えるものなのだから。
だから、死という終わりから逃れるためには、人間をやめるより他ない。
死というしがらみから解き放たれた、別の存在に変貌を遂げるしかない。
「幸いにも、
人間をやめる方法には心当たりがあります」
「きっと、たくさん責められるのでしょうね。
それも、今まで救ってくれた人たちから」
「しかし、私に躊躇ためらいなどはありません。
死という恐怖から解き放たれるのであれば、
糾弾、侮蔑に差別の苦しみなど
些細なものなのです」
そして心優しき僧侶は、人としての道を捨てることにした。