「人の心なんて見ても落ち込むだけ
いいことなんて何一つ無いもん」  
心を閉ざすこいしは、スカートを翻ひるがえしながら悲しげに呟いた。 記憶の奥底にある先祖の苦い記憶がそう思わせるのか、それともそれはこいしの心の優しさなのか。 姉のさとりでさえ、こいしの固く閉ざされた心は読むことができないでいる。
「そんなことないわ。良いことだってあるのよ」  
「表と裏、ちぐはぐな感情を見続けても
お姉ちゃんは平気だっていうの?」
「分からないなら、私の心を読めばいい。  それがさとりという妖怪の  唯一無二の能力なんだから」  
種族としての個性を嫌い、新たな個性を手に入れたこいしと、 自らの種族を大事にしているさとり。 姉妹ながら相容れない道を歩んでいるふたりだが、その関係は意外と良好だ。
「お姉ちゃんは私には絶対勝てないし、
私が絶対勝つよ」   「あら、それはやってみないと分からないわ?」
姉妹は互いに笑い合い、激しい弾幕戦へと発展する。   「これで決まりね!
『ブランブリーローズガーデン』!!」  
不敵に笑ったこいしの周囲に、色とりどりの薔薇が咲き乱れる。 そして、可憐な花弁と痛みを与える鋭い棘が、さとりを包み込んでいくのだった。