お客様をもてなすのはメイドの役割であり、招かれざる客にお帰りいただくのも同じだ。   「お掃除、お洗濯、お料理。
あなたと違って私は忙しいことを分かって頂戴」   「なによ、ちょっとあんたのとこの  真っ赤なお嬢様に話があるだけじゃない」
「こんな昼間に突然やって来る
非常識なお客様のために、
 お嬢様を起こすなんて従者として
とてもとても出来ないわ」  
今日も朝早くからお休みになった麗しいお嬢様。夜まで起きることはない。
「健康のための早起きと、  お日様の下でのお散歩をオススメするけど」  
「寝る子は育つと言うでしょう?
お嬢様は月光浴と
夜のお出かけをたしなまれているの」
「たまには昼間に起きてみるのも  刺激的なんじゃないかしら」  
「お嬢様が非行に走ったらどうするの」  
「それもそうね。  レミリアは吸血鬼として優等生だものねえ」  
「当家自慢のお嬢様でございますから」
しびれを切らした不良巫女が無言で札を取りだした。 もはや問答は無用ということだろうか、戦いの気配が満ちていく。 輝く符と銀のナイフが浮かび、飛び交おうとした瞬間――  
「――真っ昼間からなによっ!  いま何時だと思ってるのっ!」  
バンッ! とどこかから何かが壊れる音と、妖精メイドの悲鳴と歓声が聞こえた。  
「……あなたのせいですよ。
お嬢様は最近寝不足気味でしたのに」
物騒な気配を感じて起きたのだろうお嬢様の声に思わず冷たい言葉が口からこぼれる。  
「あ、あんただってやる気十分だったじゃない!  というか妖怪の事情なんて知らないわよ!」  
さて、お嬢様が来るまえにせめて追い出さなければ。 銀のナイフが空を切り裂いた。