お嬢様が来る前に侵入者を撃退することは、本来は容易なことだった。
咲夜にとって、時間は常に味方するもの、最大の武器だからである。
ただそれは、どれだけ時間をかけても解決しない問題には無力であった。
「あの本当にお帰り願えませんか?
心底迷惑なのですが……」
“お客様対応”になってしまう咲夜に、霊夢は怒りを露あらわにする。
「あんたらが犯人じゃなかったら
さっさと帰るわよ!」
「どこのなにの首謀者を
探してるのかは知らないけど、
うちは関係ありませんよきっと」
「そんなのはぶっ倒したあとで確認するわよ、
本当のことを言うわけないんだから」
凶悪な札が飛んでくる。カチリと秒針が止まる。凍った世界で距離を取る。ナイフを投げる。
しかし、どんな仕組みか非常識な巫女はそれを避ける。……本当に人間なのだろうか。
「……はあ。お願いだから大人しくして、
お嬢様に怒られてしまうわ!」
「そのお嬢様はこれから私の手で
お休みになるんだから大丈夫だって」
「ますます会わせるわけにはいかない!」
お嬢様に危害を与える者を通すわけにはいかない、それは絶対である。
例え常識の通用しない相手だとしても、決して紅魔館のメイドは屈しないのだ。
――お嬢様に狂信を誓う従者として、負けられない。
近づいてくる主の歩みを感じながら、咲夜は最後の力を振り絞った。