「飲もうよ~ゆうぎ~」
「なんだいまたかい? まぁアンタに付き合えるのは私くらいさねぇ」  
妖怪山の山頂にて、少女の姿をした鬼と、妙齢な色気の鬼が盃を交わす。 双方の双眸は赤く光り、緩やかな笑みを浮かべていた。   「勇儀の盃【星熊杯】と私の【伊吹瓢】は 相性バッチリだもんね~」
「わかったよ。ほら、注いどくれ」
山の四天王に数えられる伊吹萃香と星熊勇儀。 その周囲には酔い潰された天狗が死屍累々ししるいるいと転がっていた。 元々妖怪山は二人の住処であったが、地下世界にある旧都へ移り住んでから幾星霜いくせいそう、 幻想郷の住人にとって、僅かな妖怪を除けば、鬼を知る者はいなかった。   もはやおとぎ話とされていた鬼、その中でも最強の一角を司る、萃香と勇儀。 その二人がひょっこりと幻想郷に舞い戻る時、新たな物語が、新たな騒乱が巻き起こる。   「おー、グイッといったね。 気持ちいい飲みっぷりじゃないの!」   そんな事は露とも知らず、二人は盃に注がれた銘酒をぐびりと飲み干し、 ひと時の宴会に興じるのであった。