満月の夜に妖怪となった上白沢慧音。 彼女に与えられた役目とは、幻想郷の歴史を喰らうことだ。 不要な歴史を抹消し、人のため、幻想郷のためとなる歴史を後世に引き継ぐ。 それこそが、ワーハクタクである上白沢慧音にしかできない、彼女の使命なのである。   「これと……それと……
むぅ、もう少し巻物を整理しておくべきだった!
どの歴史をどこに置いたのか、記憶にない……!」  
ハクタク化した慧音は、気が荒くなる。
「不要な歴史はこれと……
いや、これは引き継ぐべき記憶ではないか?
 しかし、不要と考える者も多いかもしれない……
ううむ、どうしたものか」  
歴史や記録に際限はない。 ゆえに、時間が経てば経つほど、彼女の編纂作業には膨大な時間が必要となっていく。
「編纂作業を一人で担うのもそろそろ限界か?
……いいや、これは私にしかできない仕事だ。
ほかの誰かに任せる訳にはいかない」
「満月が見守ってくれている間ぐらい、
多少は無理しても問題ないだろう」  
結局、編纂作業を終えたあと、宿題の準備まで済ませるところが、彼女の彼女たる所以である。