「おや、こんなところにお客様とは珍しい!
如何ですか、我が地獄の曼珠沙華まんじゅしゃげは!」  
一面に咲き誇る曼珠沙華まんじゅしゃげが風に揺られ、その中に立つふたり。   「私は関所の門番頭、庭渡久侘歌。
ニワタリ神の久侘歌です。以後、お見知りおきを。
「ええっと、そしてこちらが……
「幻想郷の閻魔を任されている、  四季映姫です。  まあ、今はオフですので……  久侘歌のお守りとでも思っていただければ」  
柔らかな物腰の久侘歌に対し、映姫の言葉はとても堅苦しい。 その一方で、久侘歌は翼を広げながら、柔和な微笑みを顔に張り付ける。
「観光ついでに一本、お持ち帰りしてみます?
あなたのお家に曼珠沙華まんじゅしゃげのアクセント。
 うん、外に出なくても地獄にいる気分になれて、
オススメですよ」   「閻魔の私が言うのも何ですが、  鬱屈うっくつとした気分になりそうですね」
「もし何か罪を犯したとしても、
地獄気分なのですぐに反省できますし!
 地獄に行く前に反省すれば、映姫様の負担も
減りますよ? まさに名案と言えますね」   「……今はオフなので、仕事の話はやめましょう。 そちらの御方も困惑していますし」   閻魔として多忙を極める映姫は、よっぽどこの休みを楽しみにしていたのだろう。 事ある毎に仕事の話題を振ろうとする部下に、彼女はほうと溜息を洩らすのだった。