「こんな所で何をしているのかって?
……そういえば何をしに来たんでしたっけ?」
久侘歌はキョトンとした顔で隣の映姫に視線を送る。頭の上のヒヨコも同じように首を傾げた。
「曼殊沙華が満開なのでお散歩に行きませんか、
と言い出したのはあなたでしょう。
まったく……本当に、もう。
お前は少し鳥頭が過ぎます」
ふぅ、と小さく嘆息しつつ、映姫は笏しゃくで久侘歌の肩をぱしりと叩く。
「門番頭であるあなたが
もっとしゃんとしないから、
部下にも舐められるのでしょうに」
「えっへへ……申し訳ございません……」
長い長い、もとい、ありがたい時間が始まるというのに、久侘歌はなんだか少し嬉しそうだ。
「本当に反省しているのですか?
まったく、大体あなたは……」
映姫はトントンと自分の肩を笏しゃくで叩きつつ、流れるように説教を始める。
実は久侘歌の鳥頭は“自称”とも思える時があり、本当はそこまで忘れっぽくはなさそうだ。
閻魔という激務の合間、時折幻想郷に降りてきてはプライベートなお説教をするのが
映姫の休日の過ごし方……と、いうのを久侘歌は知っている。
美しい景観を見せつつ、彼女に好きなように説教をさせて羽根を伸ばさせて……
地獄の番頭神なりの優しさなのかもしれない。