「どこまでも透き通って見えて……
とてもこの世のものとは思えないです」
「そりゃそうよ。幻想郷の水質管理は
我ら河童一族が担ってるからね」
「そうなのですか? 初めて聞きました!」
「だって水が汚れたら私たちが住み辛いし、
何より商品の魚たちが育ってくれないでしょ?」
「あー確かに……
丸々と太ってて美味しそうですね。
塩焼き刺身、煮付けにから揚げ……ごくり」
「旨そうだからって勝手に取るなよ?
取ったらあとで金を請求するから」
「本当にあなたという方は守銭奴の極みですね。
一匹くらい譲ってくれてもいいじゃないですかー」
「うるさいな。ダメったらダメなの。
私たち河童が生きるためと、技術開発の材料費と、
その他諸々……とにかくあっても困らないし
裏切らない。それが金なのさ」
「商人根性の塊のにとりっぽい考え方ですね。
一匹くらい譲ってくれてもいいじゃないですかー」
「誰にどんな話を聞いたか知らないけど、
私は何を言われようが
生き方を変えるつもりはないね」
「ふふふ……ですが、
お金にがめつい河童のおかげで、
幻想郷の文化レベルが高い水準になっている」
「あはは! 分かってるじゃないか現人神!
特別に魚一匹の値段で二匹つけてあげるよ。
買ってく?」
清涼なせせらぎの音と、ふたりの笑い声が混じり合う。
距離が少し縮まった早苗とにとりは、川の流れに身を委ねるよう、
魚たちとともにゆるやかに泳いでいった。