「なあ、アリス。この人形、私にも使えないか? ひとつ欲しいんだけど」  
「無理ね。操ってるのは私だもの。
ある程度は自律行動もできるけれど」   共に魔法の森の住人とはいえ、招かれざる客に、アリスの返答はそっけない。
「ていうかさ、こいつらって、 どんなことができるんだ?」  
「命令を与えておけば、大抵の家事は
こなせるわよ。それに私が直接操れば、
かなり繊細な動きができるわ。こんな風にね」  
ランス、剣――どこからともなく取り出した武器を手に、人形たちは魔理沙を包囲する。
「おいおい、お客様に対してご挨拶だな?」  
「あら、あなたは人の本を勝手に持っていく輩を、
客と呼ぶのかしら?
 ――私の本棚から盗んだ懐の魔導書、
置いていきなさい」  
「……やれやれだぜ」  
人形たちに追い立てられて逃げていく魔理沙を眺めながら、 アリスは人形に淹れさせた紅茶を一口。   「ほんと、懲りないんだから……
この子たち、警備用にもう少し増やそうかしら」  
人里離れた魔法の森での生活も、人形に囲まれていれば寂しくはないのだろうか。 それはアリスと、彼女の人形にしかわからないことだ。