妖怪は人を喰らう。
それは幻想郷で暮らす人間たちの間で長く語り継がれてきた警告であり、
妖怪たちにとっては当たり前の日常だ。
それはもちろん、幼い少女の見た目をした、宵闇よいやみの妖怪ルーミアも例外ではない。
「むしゃむしゃ、がぶがぶ……ごくん。
むー、今日の味はいまいちかな」
赤く染まった口元を拭い、ほうと溜息を零すルーミア。
傍かたわらにはぐちゃぐちゃになった血肉と、薄汚れた人骨が転がっている。
「お腹いっぱいになってきたし、
そろそろ美味しいので締めたいな。
……そもそも私は、
今日何人の人間を食べたんだっけ?」
両手を広げ、散らばった死肉をむむむっとルーミアは睨みつけるが……。
「よく分からないから、
たくさん食べたってことでいいや!
どうせこれからまた食べるんだし、
数えたってキリがないキリがない」
「さて、と。
それじゃあ次のごはんを探しに行こっと。
大人は硬くて美味おいしくないから、
できれば子どもを食べたいなー」
人類は文化を発展させる中で、十進法を生み出しました。
しかし、妖怪が食べた人間を数えることはありませんでした。