「さぁ! 私の盃から酒を零してみな!」   質素な装いを翻しながら、赤い双眸と赤い角を光らせ、赤い盃を掲げる。 強すぎるが故、四肢に枷を嵌めた星熊勇儀は、高らかに笑うのだ。 かつて妖怪山の四天王として君臨した実力は、地底の旧都に住まいを移しても健在だった。
【怪力乱神を持つ程度の能力】
それはもはや、能力ではない。 彼女自身の肉体に秘められた、ポテンシャルである。 尋常でない怪異、範疇を越えた力の強さ、道理を乱す神妙不可思議さ。 それが怪力乱神。
鬼神とも呼ばれる勇儀の踏みつけは、その揺れだけで周囲の建物を倒壊させてしまう程。 四天王奥義である【三歩必殺】はその名の通り三段構え。 一歩足を踏み鳴らす度に、即死級の弾幕が相手に降り注ぐ。 三歩、歩いたその先にぼうっと立っている奴の命ざんきは、ない。   魔理沙曰く「力業の中でも遊びの余裕が見られる」ともあるので、 あえて相手に攻撃の隙を与えているらしく、実に喧嘩好きな彼女らしい。   「さぁて、さっさと終わらせて 一杯やろうじゃないか」   盃に溜めた酒は、己の力をセーブする枷でもあり、勝利の美酒として嗜む為でもあるのだ。