「神子様が頂点に君臨するためならば、
我はどんな犠牲も厭わない」
豊聡耳神子を崇拝し、一生の従属を誓った少女は、心の底からそう言った。
死を恐れ、密かに道教に手を出し、人の道を外れた聖徳道士。
しかし、物部布都にとっては神にも等しい存在だ。
彼女のためならば、人の首だって簡単に持ってくるだろう。
「求められるがままに贄を与え、
命じられるがままに頭を垂れよう」
時が流れ、神子が永き眠りから覚めるその瞬間も、布都は変わらなかった。
「生憎と、ここから先に通す訳にはいかない」
「我が主、神の如き尸解仙しかいせん、
豊聡耳神子様の覚醒だけは、誰にも邪魔させぬよ」
布都が神子を守ったところで、何の見返りも存在しない。
余計な事を、と後で嘆息されるかもしれないし、
自ら傷付くような事をするでない、と説教をされてしまうかもしれない。
だが、しかし。
多くの神霊を従え、迫りくる敵に皿をぶつけながら、彼女はただ当然のように、嘯うそぶくのだ。
「我が生涯は、神子みこ様のために」