守矢神社に祀まつられている本来の祭神さいじん、洩矢諏訪子。
基本的には神社の外には出ず、その存在は未だあまり知られていない。
「とはいっても、早苗の付き添いで
人里に時々降りたりはするんだよ。
ずっと神社の奥に引きこもっていても暇だからね」
「でも、見た目がほら、子どもみたいだからさ。
大人には可愛がられるし、子どもには舐められる。
私からしてみれば、
人は総じて赤子のようなものなんだけど」
人から軽く扱われることに、今更怒りなどはない。
しかし、彼女はかつて祟り神たちを束ね、日本の一角を支配していた土着神だ。
有象無象うぞうむぞうの存在である人から崇められなくなった瞬間、
彼女は祟り神の王としての本性を露わにする。
「ミシャグジ、ミサグチ、ジョグ
……ま、何でもいいや。
とりあえず、私のことを、
さまをつけずに呼んだのは……どいつなのかな?」
神への感謝を忘れるな。神への供物を決して欠かすな。
神の機嫌を損ねることは、それすなわち滅びの裁さばきが下されることと同義と知れ。