「ふふっ……綺麗な花……」
貧乏神である紫苑に訪れた、ちょっとした幸福。
春に咲くハルジオンは「貧乏草」とも呼ばれるが、その見た目は見る人によってはとても愛らしい。
「摘むのは可哀想だし、こうして愛でていよっと」
ハルジオンの花をつんつん、とつつきながらその感触を確かめる紫苑。
優しく笑う彼女は、とてもではないが最強最悪の貧乏神には見えない。
「……うぅ。そう言えば今日は
まだ何も食べてなかった……」
「お腹空いた……。
でもこの花を食べるなんて私には出来ないよ」
「花のように、土から栄養を取ることが
出来たらなあ……なんて」
貧乏神でもさすがに土は食べられない。
貧乏神として生まれた自分を呪いつつ、今日も紫苑は小さく溜息をつく。
来る日も来る日も貧乏な彼女は、何をやっても裕福になれない。
「はぁ……お花を愛でてもお腹は膨れない……」
「でも、心が満たされるぐらいは……
許して貰えるかな……?」
例え金銭的に貧乏だとしても、心までは貧乏になりたくない……。
花を前にそんなことを考えてみる紫苑だった。