幻想郷には人ならざる者が跳梁跋扈ちょうりょうばっこしている。
妖怪に神々、吸血鬼に魔法使い。そのすべてが人に害を成す存在と言える。
そんな人ならざる者たちから人を守る役目を任されているのが、
何を隠そう博麗神社は当代巫女、博麗霊夢なのである。
「……妖怪退治をするのは別に構わないんだけど、
だったら感謝の意を込めて、
賽銭ぐらい入れていきなさいよね」
幻想郷の守護者である少女は、すっからかんの賽銭箱を蹴りつけながら、空きっ腹をさすさす撫でる。
「最後に御馳走を食べたのはいつだったかしら……
最近は魔理沙が持ってきたよく分からない
キノコを食べたぐらいだし……お腹空いたぁ」
霊夢の収入源は、参拝客が齎もたらすお賽銭のみ。
しかし、博麗神社にやってくるのは宵越しの金を持たない貧乏人か、
冷やかし目的でやってくる魑魅魍魎ちみもうりょうぐらいのもの。
「私はボランティアじゃないんだっての。
そろそろ妖怪退治に報酬を払わせようかしら。
魔理沙みたいに」
言葉に苛立ちを乗せながら、霊夢は再び賽銭箱を蹴るのだった。