東に事件があれば嵐のようにシャッターを切り、西に騒動があれば風のように駆けつける。   「読者が興味を抱いているのは
真実などではありません。
その事件が面白そうかどうかです」   必要なのは決定的瞬間。その一枚さえあれば衝撃を伝えられる。 たとえ当事者に恨まれようとも、たとえ被害者に嘆かれようとも、最速のブン屋は気にしない。 新聞が読まれればそれでいい。
購読者が増えればそれでいい。
自分勝手で新聞のネタが最優先、ネタのためならトラブルなんて気にしない鴉天狗。 それこそが射命丸文であり、それこそが文々。新聞の記者なのだ。
「記事の内容など所詮はオマケ。
最高の事件は写真と見出しだけで、
九割の読者が満足するのよ!」  
もちろん詭弁だ。しかし、詭弁こそが世の中を動かすという事を、彼女はよく知っている。   「今日もどこかで誰かが事件でも
起こさないかしら」  
自慢のカメラと手帳ー文花帖ーを携え、射命丸文は今日も幻想郷を飛び回る。 そこに、捏造し甲斐のある事件がある限り――。