古明地さとりの妹、古明地こいしのことを認識している者は、この幻想郷にそう多くない。
それは彼女が第三の目を閉じる代わりに獲得した無意識を操る程度の能力が原因だ。
「もしもーし? 私メリーさん。
じゃなくって、古明地こいしだよ。
心を読まないサトリ妖怪だよ。
……むぅ、やっぱり気づかれてない」
「ま、いっか。そういえば魔理沙と
最近会ってないから様子を見に行っちゃお。
霊夢にちょっかいを出すのもいいかも。
地底に戻ってペットと遊ぼうかな」
古明地こいしは誰にも認識されないので、誰かに咎められることもめったにない。
そのため、彼女は無意識に導かれるがままに、自由に気ままに活動している。
支離滅裂な発言や行ったり来たりの思考、さらには浮ついた行動が当たり前。
古明地こいしの行動を予想できる者など、この幻想郷にはただのひとりもいないだろう。
「お姉ちゃんでも
私の行動は読めないんだって。
そもそも心が閉じちゃってるから、
読めるものも読めないらしいんだけど。
妖怪寺の僧侶には、何も考えていないから、
とも言われたっけ」
他者に何かを言われようと、こいしは意識をしない。
何故なら、無意識のままに生きることこそが、古明地こいしという妖怪のすべてなのだから。