「お嬢様、お着替えをお持ちしました」
夕暮れの紅魔館。
ようやく目覚めた主に、咲夜が世話をやく。
「こちら、お食事とお茶です」
「本日のご予定は……。ええ……はい……
分かりました。直ちに取りかかります」
言葉の数は少なくとも、簡単なやりとりで主の意を汲む咲夜。
「どうしました? お嬢様? まだ眠いのですか?
いけませんよ、
時間通りに起きなければお体に差し支えます」
主相手であろうと、甘やかすことなく、苦言を呈することもいとわない咲夜。
それだけレミリアに信頼されているのだろう。
「……わかりました。仕方ありません、
あと5分だけですよ?」
しかし最期には結局、主のわがままに屈してしまう。
人間が吸血鬼の従者になるまで、ふたりの間にどんな過去があったのだろうか。
それを知る者は限られているが、壮絶な何かがあったことは想像に難くない。
「もうすぐ5分ですよ、お嬢様。
これでようやく、紅魔館の1日が始まります」
レミリアの肩を揺らす咲夜。
幼き吸血鬼が目覚めるとき、咲夜の業務も本格的に始まる。