「砂糖はしょっぱい、塩は甘い。
上は下で、下は上。そう思うだろー?」  
天邪鬼あまのじゃくである正邪にとって、この世の全てはあべこべだ。 彼女の前ではあらゆるモノがあべこべに見えるし、そう諭されてしまう危険性がある。   「弱いモノは強いし、強いモノは弱くないと。
物事はひっくり返らないと面白くないだろ」
「あぁ、もちろん自分で動くのはイヤだが。
いや、そうでもないかもな」
「どっちがどっちで、どっちが、自分か。
自分でもわからなくなってしまうなあ」
「まあそうだったとして……。
変わったら変わったで、
それもまた愉快じゃないか」
  1秒ごとに心変わりしてしまう彼女と仲良く出来るのは、 同じくあまのじゃくなヤツか、余程お人好しなヤツのどちらかだろう。  
「どうだ? 面白いと思わないか?
どんな物事もひっくり返してみれば、
あいつもこいつも、くるくる回って踊り狂う。
そんな姿を見て回るのは楽しいだろ?」
「今、この私を見ている奴が居るなら、
そいつの考えが聞いてみたいな」
「もちろん同意はしない。
私は絶対反対のことしか言わないからな。
つまり誰かの考えの反対が、私の考えだ。
いつだってそう、それは変わらない」  
彼女と共に、世の中を変えるだけ変えてみるのも、考えようによっては面白い、かもしれない。