「我が名は豊聡耳神子!
聖徳太子といえば、お分かりいただけるかな?」  
かの聖徳道士が1400年の深い眠りからついに覚醒した。 馬小屋で生まれた、十の声を同時に聞き分ける、など数多の伝説を持つあの聖徳道士が。   「もちろん、全てが本当ではない。
私も一応元人間なのだから。
 ……でも、眉唾物の伝承だからこそ、
逆に真実味が増すだろう?」
尸解仙しかいせんとなった彼女は神霊たちを従え、大祀廟だいしびょうにて高々と宣言する。   「私の事が忘れ去られ始めたから
再びやって来ただけのこと。
 この国に仏教を広めた立役者の扱いとしては、
最悪と言っても過言ではないな!」
実際には霊廟の真上に命蓮寺が建立された事が 神子復活の大きな要因なのだが、そんなものは些細な差異だ。   「しかし、私はこの時を待っていた!
人間が私の存在を否定し、伝説となる時を!」  
「さあ私を倒して見せよ。
そして私は生ける伝説となる!」