かつて祟たたり神たちを束ね、ミシャグジさまとして人々に崇あがめ奉られていた土着神。
洩矢諏訪子と呼ばれるその神は、得意げにフフンと鼻を鳴らす。
「みんなには神奈子こそが守矢神社の神様だって
信じさせてるけど、それはただの偽装工作。
ほかの誰でもない、
この私こそが守矢神社の真の神なのさ」
事実、守矢神社に神が二柱ふたはしらいることは妖怪たちに気づかれつつも、
それが諏訪子であることは、彼女が姿を現すまでは誰にも知られることはなかった。
「私は崇め奉ってさえくれればそれでいいからね。
どうやって信仰を獲得できるかを考え、
それを神奈子に実行させるのが仕事なのさ」
守矢神社は妖怪の山に位置しているが、同じ神社である博麗神社よりも参拝客の数は多い。
それは早苗や神奈子の表立った活躍のおかげもあるだろうが、
諏訪子という策士が裏で手を引いていることもまた理由のひとつと言えるだろう。
「もちろん私は神様だからね。
畏れ信じてくれたら御利益あるよ。
……あえて言うまでもないだろうけど、
敬わないなら報いを受けてもらう」
可愛らしい見た目で、親しみやすい言動をしていようが、彼女は祟り神の長である。
ミシャグジさまを軽んじることだけは、絶対に避けねばならない。