「喰らいな! 三歩必殺!」 勇儀の細い足が一歩踏み出す毎、大地が、世界が荒れ狂う。   「あたしは、まどろっこしい事は嫌いなんだよ。
やるかやられるか、それだけさね」
豪放に言い放ちながら手にした盃、星熊杯に口を付けて傾けた。 ぐびり、ぐびり、と杯の中の酒が勇儀の喉を通る。   「私は強い。だからお前にはハンデをやるよ」 「この盃の中の酒を一滴でも零せたらお前の勝ち、
それで対等な喧嘩が出来るってもんじゃないかい」
強すぎるが故の戒めは盃だけでなく、手足の枷かせもその一つ。 だが、それでも、その強さは幻想郷の中でも群を抜いている。 旧友である萃香と共に妖怪の山を手中に収めていた、その剛力は衰える事を知らない。 だからこその鬼。
  「喧嘩が終わったら、きっちり酒に
付き合ってもらうから覚悟しときなよ!」
「あっはっは!」  
【怪力乱神を持つ程度の能力】は豪放磊落、些細な力は捻り潰されてしまうだろう。 戦いが終われば勝者も敗者も無く、ただ酒が酌み交わされる。