「あたいはどんな妖怪なのかって?
さとり様のペットの火車だよ」
死体が積まれた猫車。それを押すのは二本の尻尾をゆらゆらと揺らす赤毛の猫娘。
火焔猫燐という名を持つその妖怪は、死体管理のエキスパート。
灼熱地獄跡を主な職場とし、そこでは死体や怨霊の管理などを任されている。
「死体や亡霊と話すこともできるのさ。
でも、会話はあまり成立した覚えがないね。
みんな総じて錯乱してるからね」
彼女は死体を拾っては地底に持ち帰る任を与えられているが、
だからといって彼女自身が積極的に人を襲って死体へと変えたりすることはない。
凶悪な妖怪ばかりな地底妖怪の中でも、彼女は屈指の平和主義者なのである。
「生きている人間になんて興味はないし、
妖怪に食い散らかされた死体もつまらないよ。
妖怪に食われたやつは恨み言ばっかりだ、
せっかくなら面白い死体と話したいじゃないか」
今日も生きの良いヤツが大漁さ、と積まれた死体を尻尾で撫でつつ
灼熱地獄跡を目指して猫車をえっちらおっちら向かわせる。
「今日も死体で業火の車が重くなる~♪
あなたも死んだらお話しようね!」
持ち去られた死体が灼熱地獄の燃料となることは、あまり知られてはいない。