博麗神社の周辺には、昼なのに闇に包まれた空間が目撃される。 それは決して自然現象などではなく、闇を操る妖怪が起こした超常現象である。   「私はルーミア。幻想郷ではありふれた、
どこにでもいる普通の人食い妖怪だよ」  
きらきら眩しい金髪に結ばれた赤いお札を揺らしながら、ルーミアはにっこりと微笑んだ。
「人間はね、すごく美味しいよ。
特に子どもがオススメかな。
 逆に大人、特に男の人は全然ダメ。
硬いし筋張ってるし、いいとこなしだよ」  
妖怪にも好みというものがあるらしい。人間にとってしてみれば、有難迷惑この上ないが。
「でもねー、最近はなかなか捕まえられないんだ。
だからいつもお腹ペコペコ」  
夜は決して人里の外に出てはならない。 妖怪に喰われることを恐れた人々が己の身を守るために流布させた、暗黙の了解。 たったそれだけのことなのに、効果は絶大。 ルーミアのような人食い妖怪はお腹をくうくう鳴らす始末。
「そろそろ私が捕まえなくても、
勝手にお口に飛び込んできて欲しいなぁ」  
無邪気な笑顔で舌なめずり。しかし、彼女の望みが叶うことは決してない。 ルーミアに与えられるのは人の肉などではなく、巫女のお祓い棒なのだから。