かの有名な一寸法師の末裔は、虫籠の中で足をパタパタ。 その姿はまるで、童子に買い与えた人形が勝手に動き出したかの様。   「この中にいれば猫に襲われないし、
カラスに連れ去られる事もないわ」  
安全性の高さでいえば、かつての逆さ城とは到底比べ物にならない。 食べ物はもらえるし、来訪者に可愛がってもらえるし、何より外敵に怯える心配もない。
「小さくなってしまったけれど、
今の方が昔よりも快適かも」  
一尺にも満たない身体だからこそ、満たされる生活というものがあるのだろう。 しかし、やはり不便な事もあるようで……。   「霊夢がいないと、
高い場所にあるものが取れないの」
「お風呂に入るのも簡単じゃないわ。
道具からお湯から、
全部用意してもらわないといけないもの」
「一番不便なのは、外に出られない事かな。
買い物ができないし、
何より友達にも会いに行けない」  
かつて異変を共に起こした天邪鬼に想いを馳せつつ、今日も彼女は虫籠の中で足を振る。 幻想郷で最も小さく、最も平和な城の中で。