人も妖怪も神々も、誰にだって秘密のひとつやふたつ、存在する。 しかし、彼女の前ではどんな秘密もたちまち露見してしまう。   「私は心が読めますから。
ああ、名前ですか? さとりです、古明地さとり。
 他者の心を勝手に悟る、
失礼で最悪な、私らしい名前でしょう?」
相手に質問することすら許さない。勝手に心を読んで、勝手に会話を成立させる。 そんな能力のせいで、さとりは生きとし生けるもの、 すでに死んでいるもの問わず、蛇蝎だかつの如く嫌われてしまっている。   「別に気にしてはいませんよ。
今に始まったことでもありませんし。
 その代わり、私もあなた方を嫌うだけです」
他者との接触を拒否し、基本的には地霊殿に引きこもっている古明地さとり。 出不精の彼女が心を許すのは、地霊殿で飼われている多種多様なペットたちのみ。   「動物はいいです、単純ですから。
気を遣う必要がない。
 ……まあ、ペットたちは私のことを
避けているようですが」  
クスクス笑うその姿は、どこか悲しみを感じさせる。 実際のところ、ペットたちは彼女のことを慕っていたりするのだが、 それを彼女が認識しているのかあえて無視しているのかは、彼女のみぞ知る。