「地上から見る月は綺麗ね。狂おしいほどに綺麗」
永遠亭の縁側に立つ古のかぐや姫はほぅ、と溜息を吐いた。
かつて月から追放され、それから幾星霜いくせいそうの時を生き続けた月の姫。
「永遠の魔法は歴史を止め、
成長を止め、時間を止める。
時間が止まれば
動き続ける時の中では認識されなくなる。
ふふ、貴方には少し難しいかしら」
輝夜は手に持つ神具、蓬莱の玉の枝をゆらりと振る。
「五つの難題、そう言えばそんな事もあったわね」
地上へ降り立った数百年前の思い出、億を生きる輝夜にとっては須臾しゅゆの時と同じ。
しかし須臾しゅゆを操る輝夜には例え須臾であってもその彩が褪せる事は無い。
「こんな昔ばなしをしても、意味がないわね」
にこりと微笑んだ輝夜はふわりと宙に浮く。
「さぁ始めましょう。
貴方はたまの、いえ……。
弾のお客さんなんだから、
楽しまないと損ってものよね」
月光を背にした古の姫はその凄艶さを露わにした。
月影と月明りの狭間で来客をもてなすべく、華麗な弾幕が舞い踊り始める。