「これお主、わしの尻尾で遊ぶでない……
何? もふもふで気持ち良いから許せじゃと?」  
酒徳利さかどっくりを片手に酔いどれていたマミゾウ。 ふと気付けば、どこぞの妖精が自慢の尻尾に埋もれて幸せそうな顔をしている。 もふん、もふん、と体ほどもある巨大な尻尾を振ってみても、
妖精は一向に離れようとはしなかった。  
封獣ほうじゅうぬえに呼ばれて遠路はるばる佐渡の国から来たものの、 マミゾウが着いた頃には、騒動がすっかり収まってしまっていた。
「せっかく遠出したというのに、
タイミングが悪いのう……」  
それからはなし崩し的にぬえと共に命蓮寺に住んでいるのだが、 千年古来の仲間が集まる命蓮寺では、新参である故に若干浮いた存在になってしまっている。 「おや、丁度良い所に人間カモがおるぞ」   【化けさせる程度の能力】を持つ化け狸の頭領は、 今日も何かに化けては誰かを驚かし、その様子を楽しげに見詰める。 次に化けるのは人か、妖怪か……はたまた仏、それとも神、あるいは自分なのか。