感情の数は無限大。 つまり、彼女の面の種類も無限大。   「私は幻想郷一表情豊かな存在と言っても良い。
どうだ、すごいだろー」  
天狗の面を被り嬉々とする面霊気は、またそっと別の面を被る。   「……まあ、ぶっちゃけると
我々の面は六十六種類しかないのだけれど」
しかし、感情が多いという事は、精神がすぐに乱れやすいという事。 幻想郷一感情豊かなこころは、幻想郷一取り扱いが難しい付喪神つくもがみなのだ。   「失礼な。
最近は能楽のおかげで安定してきているわ」
彼女の能楽は人々の間でもかなり評判だ。 無表情のまま踊る姿、時々勝手に入れられるアドリブ、そして何より派手な演出。 彼女にしかできない、彼女だからこその能楽は、今現在、人の感情を大いに昂らせている。   「人の心を躍らせるのは、
思っていたよりも悪くない」  
人の心を表す面の付喪神つくもがみは、無機質な面の下でこっそり指で口角を上げるのだった。