「来たわね来たわね。
平穏を脅かされた程度で怒り心頭の有象無象が」  
彼女が幻想郷内で天変地異を起こすのはこれが初めてではない。 賢者に本気で殺意を向けられた。巫女からは面倒だからやめろと叱責された。 今度もきっと、これを止めに来た有象無象に敵意を向けられるに決まっている。 だが、しかし、そんなことは想定内。むしろわざと怒りを引き出しているまである。   「いいわ、いいわね、その敵意。
私の退屈凌ぎに付き合わせるにはもってこいだ!」
宙を漂う岩塊に、天子は剣を突き立てる。天を、気質を操るその剣の名は緋想の剣。 退屈な生活を少しでも充実させたい一心で彼女が勝手に持ち出した、天界の宝具である。   「準備はできてる? 私はもちろんできているわ」   風が走り、大地は轟き、川は踊る。 我慢することを知らない不良天人は、己の欲に導かれるがままに、戦いの火蓋を切って落とす。
「催事の丹をつまみ食いしたってだけで
天界から一時的に追放されたこの私。
 半端なところで追い出されたから
めちゃくちゃお腹が空いているの!
 あなたたちの本気で、怒りで、弾幕で……
比那名居天子を満足させてみせなさい!」  
そう言うと、天子は剣を引き抜き、地上に向かって飛び出した。