「無事に処理できましたよ、お嬢様」
ひと仕事を終えた咲夜が、主であるレミリアに報告する。
何事も無さそうに語る咲夜の声色から、レミリアは満足そうに応対しているようだ。
ただこれも、咲夜にとっては日常の些細な一幕。
「夜は静かに過ごすのが一番ですね、お嬢様。
これで今宵もゆっくりと過ごせることでしょう」
「……紅茶とケーキが食べたい?
人間の血をたっぷりかけて?ええ、わかりました」
レミリアとの会話を終え、ふっと息を漏らす咲夜。真っ暗闇に、彼女の白い吐息が舞う。
「やれやれ……お嬢様は
私がいないと何もできないみたいですね。
人間の血……まだ屋敷に残っていたかしら?
足りないなら補充しておかないと……」
などと考えながら、紅魔館への帰路につく咲夜。その途中、ふらふらと歩く人間を見つける。
「あら……ちょうどいいところに。
あなた、なかなかいい身体をしていますね。
全身にいい血が流れている
……お嬢様のお口に合うかもしれません」
「いかがでしょう?
我が主にその身体を捧げてみるというのは?」
酒に酔っているのか、人間はふらふらとしながら咲夜の言葉にこくこくと頷く。
「それはそれは……。立派な心がけですね。
きっと主もお喜びになることでしょう」
「屋敷はすぐそこです。美味しい料理も、
お酒もご用意いたしますので。
きっとご満足いただけるはずです。
さあ、ともに参りましょうか」
闇夜の晩。暗闇の中で紅に染まる。赤い月に照らされる屋敷の番人。それが十六夜咲夜。