「あまり疲れることはしたくないのだけれど……」
本を構え、気怠げに相手を見据えるパチュリー。
陽の光などほとんど浴びていないであろうその身体からは、並々ならぬ魔術の奔流が流れている。
火、水、木、金、土、日、月。またの名を陰陽、五行、そして七曜。
見かけによらず東洋の概念を使いこなす西洋魔女、それが彼女、パチュリー・ノーレッジだ。
「はぁ、すぐに終わらせないと……
読みかけの本があるのよ。
ちょうどいいところで終わっているから、
先がどうしても気になってて」
ゆったりとした動きながらも、隙を生じぬ所作。
病弱な身体を補って余りあるほどの彼女の魔術の才を前にしては、
生半可な相手では立っていることすら困難であろう。
「相手ぐらいはしてあげるけど、
もちろん手加減なんてするつもりはないわ」
ポーカーフェイスに定評のあるパチュリーの口元が僅かに釣り上がる。
「遺言はもう済ませた?
まあ、聴くつもりなんて微塵もないけどね。
私はただ、この無駄な戦いを
さっさと終わらせたいだけなのだから」
そしてその言葉通り、彼女が本の続きを読み始めるのに、そう時間はかからなかった。