「私は西行寺幽々子。
足があるけど、れっきとした亡霊よ?」  
冥界の白玉楼でかれこれ千年以上も暮らしている亡霊の姫、幽々子。 真意を誰にも掴ませず、常に飄々とした態度の彼女は、まさに亡霊らしい存在といえる。   「白玉楼に妖夢と一緒に住んでいるの。 少し遠いけど、いらっしゃったら
素敵なお庭を妖夢に案内させますわ」
白玉楼の庭に聳え立つ大木の名は西行妖。 二度と満開になることのない、死体の上に咲いた桜の木である。   「あの下には、誰かの亡骸が埋まっているの。
ふふ、気になる?
 でも、駄目よ。西行妖にだけは手を出しちゃ駄目
私を怒らせたくないなら、ね」  
幽々子に殺せない生き物はいない。 死を操り、死霊を操り、死へと誘う彼女にとって、生者の生を奪うことは造作もない。
「心配しないで。
死んだってそこですべてが終わる訳ではないわ。
 死してなお、愉しく。
終わってから始まる人生だってある。
 生きていることの喜びに負けないぐらい、
死ぬことは嬉しいんだって、
あなたに教えてあげましょう」