庭師は庭を守るのが仕事らしい。 だから庭への侵入を試みる不埒な輩を退治するのは、白玉楼の庭師である妖夢の仕事なのだ。   「ふう……悪霊を退治するのも庭師の仕事。
これも私の役目です」  
白玉楼の庭に無断で侵入してきた悪霊を一太刀で斬り伏せる妖夢。 こういう仕事は彼女にとって、日課である。 恐らく世の庭師という存在は、こうして毎日侵入者を撃退しているのだろう。   「……いや、そんなことはないような気もします。
庭師という職は番兵とは違うと思うのですが」
しかし真面目な妖夢はそれに対して異を唱える気はさらさら起きなかった。 仮に業務内容が違ったり何故か異変を解決するために駆り出されることがあったとしても、 至上の剣士を目指す彼女にとってはそれらすべてが修行の一環。   「とはいえ一応庭師という
肩書きを与えられている以上、
まったく庭師らしい仕事をしていないのも
 それはそれで問題な気がしますね……。
庭師らしく、
たまには庭に何かしたほうがいいのかも」
妖夢は先日人里で購入した『庭師の心得』なる本を開いてみる。なるほど、なかなか奥が深い。   「木の枝を切って整える……庭の景観、
色のバランス……センスが問われる職人技ですね」  
本の内容を確認しつつ、妖夢は並んで生えている桜の木をじっと見つめる。   「……少しぐらい切ってみてもいいかも
しれませんね。形を整えるのもやぶさかではない」  
妖夢は刀を抜き、桜の木に向かって構える。これも修行の一環だと自分に言い聞かせて。