命蓮寺の境内で睨み合う、正体不明の妖怪と付喪神つくもがみ。
へらへら笑うぬえとの距離を一気に詰めるや否や、小傘は傘の顔面をぬえの鼻先に突きつける。
「う~ら~め~し~や~!」
成功したと確信したのか、小傘は鼻を鳴らして得意顔。
しかし、一方のぬえは瞼を何度も開閉し、困ったように肩を竦める。
「……えっと、それだけかい?
あんたの本気の驚かしってやつは」
「あれっ、どうして驚かないの!?
勢いが足りなかったのかな……
う~ら~め~し~や~!」
右から左から、前から後ろから。あの手この手でぬえを驚かそうとする小傘だが、
悲しいかな、ぬえの顔が驚愕色に染まることはただの一度もなかった。
「……しょうがないな。
私がお手本を見せてあげようじゃないか」
そう言うと、ぬえは小傘をひょいと抱え、歪な羽根と尻尾を華麗に回す。
直後、ふたりの少女の周囲に数機のUFOが姿を現し、右へ左へ旋回し始めた。
「わっ、わっ! 何これ、どうなってるの!?」
「驚いたか? 慌てたか? あんたにこれが
どう見えてるのかは分からないけど、
動揺していることだけは
手に取るように伝わってくる」
「ぐぬぬぬ……また負けちゃった……
でも、次こそは私が勝ってやるんだから!」
「やる気があるのはいいことだ。
だったら、いつかは見せておくれよ。
あんたが私を驚かせる、
予測不能な未来ってやつを」