騒がしい十五夜。妖怪たちが蠢く満月の夜に、輝夜は珍しく苛立っている様子を見せる。   「まったく騒々しいわね。こんな日ぐらい
静かに過ごしたいものなのだけれど」   「あぁ、すみません輝夜様。  師匠は今出払っているので……  帰ってきたらお願いしておきます」
そんな輝夜を永琳の代わりに鈴仙がなだめようとしていた。 しかし輝夜の腹の虫は治まりそうにない。   「別にいいわよ。
永琳の手を煩わせるほどじゃないわ。
私が適当にやっておくから」   「輝夜様が本気を出すんですか? それはその  ……そこまでするほどじゃないと思いますけど」
「あまり五月蠅くされると、
ゆっくり眠っていられないでしょう?
私の眠りを妨げた罰よ」   「うぅ……本気の輝夜様は  加減を知りませんからねぇ……怖いですよぉ……」  
「私が怖いって、どういう意味かしら?」
「いえいえっ!  さすがは輝夜様だと言ったんですよ!  私も久々に姫様の力が見たいです!」  
「でしょう? 普段は永琳任せだから、
力が鈍ったりするといけないから。
たまにはこれぐらい……」  
そう言って、輝夜は月に向かって手を伸ばす。 すると夜の暗闇が、輝夜の作り出した暗闇にどんどん塗りつぶされていく。 その力は留まることを知らず、幻想郷全体にまで及ぼうとしていた。
「ちょ、ちょっと輝夜様?  いくらなんでもやり過ぎじゃありませんか……?」  
「やり過ぎなぐらいが丁度いいのよ。
それに、何かあったら永琳がなんとかするわ」   「結局お師匠様任せじゃないですかー!  どうするんですか、これ!」