「……姫様も、少しはやる気を出してくれると
いいのだけれど、そういうわけにはいかないわね」
永遠亭でのある日、溜まりに溜まった業務をこなす永琳。
本来は主である輝夜がやるべき内容もそこには含まれているが、永琳は特に咎めなかった。
「まあ、月にいたころからあの子の行動はよく
分かっているから……別に構わないのだけれど」
実際、輝夜が何かをするより永琳がやってしまったほうが早く終わるし確実だろう。
それを永琳は理解しているし、何より輝夜自身が一番分かっている。
「私も甘いわね……自分でも分かっているけれど、
そばにいるのはそのくらい、
心地が良いのかしらね」
かつては輝夜を教育する立場だった永琳だが、今では彼女の従者として働いている。
「昔から変わっていない……良くも悪くも、
ずっと純粋なままなのよね。
そんなあの子を見守ることが、
私にとって大切なこと
……これから先も、変わらないわ」
昔の輝夜の姿を思い出したのか、永琳の顔から笑みが零れる。
月から追われる日々の中にはあまり思い出したくない出来事もたくさんあるが、
輝夜との大切な思い出はそれ以上に多く存在する。
そしてこれからも、彼女との大切な思い出は数えきれないほどに増えていくに違いない。
「さあ、今日も輝夜のためにがんばりましょうか」