「少しよろしいですか? 輝夜」
「なあに、永琳? 今行くから少し待っていて」
月明かりが差し込む夜の永遠亭。静かに休んでいた私の元に、そっと永琳がやってくる。
「ふふっ、実は今日人里でこんな物を
見つけたの。どうかしら?」
私に向かって微笑む永琳。その手には綺麗なかんざしが握られていた。
「へえ……綺麗ね!とっても手が込んでいるわ。
月の技術には及ばないけど……なんてね」
「気に入った? 懐かしいわね、こうやって……」
そう言って永琳は私の頭をそっと撫でるようにしながら、かんざしを彼女にさす。
「昔は、つけてあげたこともあったわね。
……よくお似合いですわ、姫様。お綺麗です」
「ちょ……ちょっと……恥ずかしいわよ……
もう子供じゃないんだから……」
「変わりませんよ、幼い頃からずっと。
いつまで経っても貴方は美しいまま。
この瞳も髪もずうっと変わりません……
きっとこれからも……」
いつもは従者として一歩退く永琳だが、こうして揶揄からかってくるときもある。
「……あなただって変わらないわ。いつだって
私がして欲しいことを一番にしてくれるんだもの」
目があったまま、ずっと言葉のやりとりをしている。
こんな静かな夜は、ふたりきりで昔に想いを馳はせるのも悪くは無いのかもしれない。
そんなことを考えながら、私の髪を撫でる永琳の手に身を任せてみるのだった。
恥ずかしいような、懐かしいような、不思議な感覚……。