紅魔館の図書館で、今日もパチュリー・ノーレッジは本を読む。
「パチュリー様ぁ。たまには外に出ないと
病気になっちゃいますよ~?」
「不要な気遣いね。そもそも魔法使いが
病気になるはずがないでしょう?」
「それはそうかもしれませんけど、
もしもということがあるじゃないですか。
ほら、どんな魔導書にも必ず書いてありますし。
油断は大敵だって」
「それはその魔法使いが未熟なだけよ。
私はそんなヘマはしないわ」
髪をかき上げ、靴の先で床をコツコツ鳴らすパチュリー。
従順なはずの使い魔から注意されて、少々機嫌がよろしくないようだ。
「そんなことより、図書館の掃除は終わったの?
さっきから同じところを
ぐるぐる回っているように見えるのだけれど」
「え、えーっと、それはですね……
こちらに積んである本を並べる順番をですね、
少々ド忘れしてしまって……
今全力で思い出そうとしていたところなんです!」
「……とりあえずそこに置いておきなさい。
私がなんとかするから」
言いながら、パチュリーは魔法で本を持ち上げ、本棚に綺麗に並べていく。
「わぁ、流石はパチュリー様。
意地でも自力でやらないところが
とても魔法使いっぽいですね」
「当たり前じゃない。便利なものが
目の前にあるのだから、使わなくてどうするのよ。
いいから、あなたは床掃除でもしておきなさいな」
「はーい」
ぺろりと悪戯っぽく舌を出しながら、使い魔は言われた通りに箒を手に取るのだった。