床を箒で掃いて磨いて、本を並べて手入れをして。
何百、何千、何万もの本が収められた図書館の掃除は、そう簡単には終わらない。
「パチュリー様ぁ。申し訳ありませんが、
ちょっとどいてもらえますか~?」
「私に命令するだなんて、
いつの間に偉くなったのかしらこの使い魔は」
「もう、意地悪を言うのやめてくださいよ~!
掃除ができないから
どいてもらいたいだけなんですってば!」
「分かっているわよ。ちょっとした冗談じゃない」
「パチュリー様のは冗談なのか本気なのか
分かりにくいんですよね……」
呆れる小悪魔を一瞥すると、パチュリーは魔法を詠唱。
次の瞬間、彼女の身体はまるで風に乗る綿毛のようにふわりと宙に浮かび上がった。
「ふぅ……小悪魔、これで満足かしら?」
「わざわざ魔法じゃなくて
歩いて動けばいいのでは……?」
「何度も言わせないでちょうだい。
魔法という便利な道具があるのに
わざわざ原始的で不便な方法を
とる意味なんてどこにもないわ」
「パチュリー様のそれは
ただの面倒くさがりだと思うんですけど……。
動かない大図書館の名は
伊達じゃありませんね。はぁ」