「南無三!」   白蓮が声を上げると、背後に魔法陣が展開し、魔法陣の四方には蓮の花に似た飛鉢ひはつが現れた。   「人は変わらないな、わたしが封印される前も今も
自分本位で妖怪退治を行う愚かさよ」  
憐れむような視線を相手に向けながら、飛鉢ひはつから数多のお札を射出していく。 かつて妖怪を救うべく奮闘し、それを良しとしない者達により排他された白蓮。
「人も妖怪も神も仏も、
あまねく全ては皆平等だと言うのに、
それがどうして分からないのかしらね!」  
白蓮の前では全てが同じ、救うべき対象。 死を恐れ、東洋の西洋魔術使いとして研鑽を積み、魔界に封じられた尼僧にそうは 封印を解かれても尚、そのポリシーを曲げようとはしない。
「勘違いしないで欲しいのだけど、
私は人間だって救いたいと思っているの」  
手にした巻物、魔人経巻が七色の光を放ち、魔法の詠唱を簡略化する。 そして放たれるお札は数を増していき、退路を断つべく敵の周りを囲い込んでいった。   「全ては救済の為に、南無三」