「今日こそは殺してやる。  そしてお前を殺して私も死ぬ」  
「何言ってるの。私もあなたも死ねないし、
あなたと心中する気にはさらさらなれないわ」  
普段は気立てもよく、誰かの手助けを趣味としている妹紅だが、ことさら輝夜になると話は変わる。
「そういう理屈の次元で話してない。  感情の問題なんだよこれは」  
どこか嬉しそうに呟き、白髪を靡なびかせる妹紅の体を炎熱が包み込んでいく。   「あなたも私も成長しないわね。
……でも、飽きもせずにこうしてあなたの遊びに
 付き合ってあげちゃうんだから、
きっと私もこの状況を楽しんでいるのかもね」
千年来の刺客は長い時の中で、いつしか仲間意識が芽生える存在となっていた。 ついこの前は、死闘の末に竹林を燃やしてしまいひと騒動になったが、それもまた楽しい思い出。 停滞を続けていた輝夜の日常に彩をもたらしてくれた、かつての求婚者の娘である妹紅。 そんな妹紅の誘いに乗るべく、輝夜も蓬莱の玉の枝を取り出して臨戦態勢を取る。  
「今日こそ殺す、殺してやる!」  
「今日も殺す、殺してあげるわ」   不老不死対不老不死、終わりのない日常的な殺し合いだんまくごっこが幕を開け、 今日も幻想郷の空で、ふたりの苛烈な攻防が繰り広げられるのだった。