「お前たちのような凶悪な妖怪に、
大事な人間たちを渡すわけにはいかない!」
慧音は妖怪の血が流れているにも関わらず、心から人間を愛していた。
彼女は人間を守り、人間のために行動するという理念を持つ。
「歴史を食べ、歴史を創る。それが私。
人間に害を与えるつもりなら、
お前の歴史も食べてしまおうか」
普段は人間として歴史をなかったことにし、
満月の夜のみ白澤ハクタクとなって、幻想郷の全ての歴史を覗き見る。
その中に人のためにならない歴史があるのなら、改竄かいざんした形で後世のために書き記す。
「人間の里がここにあった、
という歴史をなかったことにすれば、
ここには何もなかった、という結果だけが残る。
歴史を消しただけで事実は残るが、
認識することは出来ないのさ。
ふむ、お前たちには難しい話だったか。
もう少し歴史を学ぶことを勧めるぞ」
教師として子供達の教鞭を取っている彼女だが、
人に仇あだなす存在が現れれば、心優しい教師の姿を捨て、義なる怒りの炎を燃やす。
「事実は事実。だがそれを誰かが書き記さなければ
歴史にはならない。
さあ構えろ、
教育の時間だ!」
彼女が生きている限り、人の歴史は紡がれ続けるのだ。