「いやぁまさかバレるとは思わなかった」  
「そりゃバレるわよ……ねぇもうやめない?  人を騙してお金儲けするの」  
常日頃から詐欺紛いの品物を売りつけているてゐは、 客に不審がられて詰められることも、よくあった。
「かわいいじゃん。カラー兎。普通の白兎の毛を
染料で染めただけだけど。
 それに河童製の染料だから水で落ちないし、
兎の身体にも害はないつくりさ。
我ながら完璧だと思ったんだけどね」   「自分から、染料で染めましたって  白状しなければね」
てゐは詐欺師でありながらも、ちょっと抜けた一面があり、失敗することもしばしば。 というより、杜撰な作りの商品の粗が、幸運にする程度の能力のおかげで見逃され、 ギリギリ商売として成り立っているというのが現状だ。   「いやぁ失敗失敗。じゃあ次は
五つ葉のクローバーでも作って売るか」  
てゐは兎だったころ、騙されて怒ったワニに毛皮を全部剥がされた、つらい思い出がある。 だが、どんな凄惨な目に遭っても、その曲がりきった性根は直らなかったようだ。 もし屋台で色とりどりの兎が売られていたら、その店主はもしかしたら幸運の妖怪兎かもしれない。