「……ひとつ、気になることがありまして。
なんで私がキジなんですか!?説明を求めます!」  
久侘歌だって桃太郎はよく知っている。昔々の日本のお伽噺。 もっとも久侘歌からしてみれば、昔ではなくわりと最近寄りの物語かもしれないが。   「ええ、もちろん皆さんで桃太郎一行に扮して
鬼退治へ行くことは理解していますとも。
 ですが私がキジというのは納得がいきません。
なぜなら私はニワトリなのですから」
「……はい? ニワトリよりキジの方が綺麗だし、
立派な鳥だろう? 喜んでくれるかと思った?」  
久侘歌は信じられない、とでも言うような顔で全身をわなわなと震わせる。   「あり得ませんっ、断じてあり得ませんよ!
本来ニワトリはキジよりも崇められる神聖な鳥。
 ですからキジと同列に見做されては困ります!
私はニワトリに誇りを持っていますので」
鶏はキジ科の鳥である。 だから久侘歌がキジ役になることに問題はないはずだが、どうやら納得いかないらしい。   「違います違います!確かにキジは仲間ですとも!
ですがキジはキジ、ニワトリはニワトリです!
キジよりもニワトリは美しい。
一緒くたにされるだなんて、心外です!」
「ほら見てください、この立派なトサカ!
キジにありますか?
それだけ凄いと思いませんか、ニワトリが!」
えっへん、とでも言うかのように胸を張る久侘歌。   「まあ、今回はその無知に免じて
キジ役を引き受けましょう。
 ですが、あくまでニワトリが上だということは
お忘れなきように!」