「トリックオアトリトン~♪ あれ?
トリトリトリートメント? なんだっけ?」  
機嫌よく夜空を飛行し、悪戯を仕掛ける場所を探していたクラウンピースは、 大事なキーワードを忘れて困っていた。   「ふええぇ~やばいよ~。この言葉を言えば
何をしても許されるって聞いてたのに~。
 これじゃあ悪戯できないよ。
思い出せ、あたい!」
周りを飛ぶお化けカボチャたちも、クラウンピースを見て少し不安げ。 いつもの星条旗風の装いとは違う、特注で頼んだ黒とオレンジの衣装も無駄になってしまうのか。 そう考えたクラウンピースはきりりと前を向き、ニカリと笑った。   「分からないなら聞けばいい!
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥、ってね!」  
地獄に生を受け、長い妖生を送ってきた甲斐もあり、聡明な妖精である。
「じっとなんてしてられない!
イッツ! パンプキンターイム!」  
生粋の悪戯っ子である妖精は、ただただ目の前の興味に向かって一直線。 愚直で素直、楽しむことに全力を注ぐ妖精たちは、悪戯の免罪符を求めて飛行速度を上げた。 年に一度の一大イベントを、魂すべてで飲み込まんとするように。